SOHO心得

SOHOに必要な経験はなにか?
資格や学校は果たして役に立つのか?
そもそもSOHOとはなんなのか…
SOHOに関して知っておきたいことをまとめました。
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【SOHO心得】



【SOHO経営・営業ノウハウ】




【SOHO心得】


■SOHOってなんだ!?

 そもそもSOHOとはなにか?

 SOHOはSmall Office and Home Office(小さなオフィスと自宅オフィス)の頭文字を取って作られた言葉。日本ではある家電メーカーがOA機器の新しいターゲット分類用に使い始めたとも言われています。

 「小規模な事務所や自宅で仕事するひと」と定義するとその範囲は非常に広くなります。SOHO団体などでもそれぞれ対象としているSOHOが異なるので、それら団体を利用する際などは必ずその団体におけるSOHOの定義を確認するようにしたいものです。

 わたしはSOHO向け広告企画を出す際には以下のようにSOHOを分類して話すことにしています。

1)テレワーカー
通勤せずに自宅やサテライトオフィスなどで勤務する会社員。

2)在宅ワーカー
女性を中心としたパートタイム感覚で自宅で仕事をしているひと。

3)フリーランス・専門職
デザイナーやライターなど主に技術を売り物にした自由業、あるいは医師、弁護士などの専門業で独立開業しているひと。

4)スモールオフィス
旅行代理店、デザイン事務所など小規模オフィス。
※職務的にはフリーランスや次のスモールショップと変わらぬものもあるが、ターゲット分類に際しては購入行動のちがいがあるため、こう分けている。

5)スモールショップ
八百屋などリアル店舗のある店からオンライン通販まで仕入れ・販売を行う業種の小規模なもの。

6)ベンチャー
ベンチャー(Venture=冒険)は語源からもわかるとおり、リスクを恐れずに果敢にこれまでにない新規の事業を行う企業。

 このノウハウ集で対象としていくSOHOはテレワーカー以外のすべてにまたがっていきますが、基本的にはデジタル系職業が対象。特に一番力が入りもするし、わたし自身が一番わかる分野がフリーランス、特にクリエイターです。


■クリエイターに実務経験は欠かせない

   「実践的」専門学校は多々あります。しかし、どんな実践的専門学校を出ても、学校を出たてのクリエイターには仕事をまるごと任せることなどできません。

 大学出に比べれば、まだしも専門学校出のクリエイターのほうが実践的知識はありますが、しょせん知識だけ。クライアント(仕事依頼主)の要望を形にするとはどういうことか、現実の現場の印刷屋やプログラマー、カメラマンなどとどうやりとりすればいいのか、学校出たばかりの人間はわかりません。

 わたしはコピーライターとして新人デザイナーとも接してきましたが、学校出ただけのデザイナーにひとりでは絶対に仕事は任せられません。まだしも経験10年のコピーライターにデザインやらせるほうがましなくらいです。

 なぜ、それほど実務経験が大切なのでしょうか? 学校では学べないこと、実務経験でしか学べないこととはなんなのでしょうか?

 それは現実と折り合いをつける技術です。
 「こうやればすばらしい作品が作れる」としても、予算的に無理なものは無理。予算内でイメージに近いものにするテクニックが必要です。またいくら条件を満たした上質な作品でもクライアントを納得させられなければ意味がありません。

 クリエイターは芸術家ではありません。クライアントを納得させてなんぼ。相手を納得させられなければ、作品は世に出ません。
 「創ること」はクリエイターの仕事の内の半分にしか過ぎません。もう半分の、そして創ること以上に重要かもしれない仕事はプレゼン(プレゼンテーション。企画案を提示して説明する行為)、クライアントを説得することです。

 学校の課題と現場の仕事のちがいはここにあります。
 学校の課題は作って出せば、それなりの評価をもらえるし、いったん提出したらそこで終了します。
 しかし現場の仕事は直して直して、相手との妥協点に落ち着かせるまでが仕事だし、相手を納得させられなかったら、世に出ることはありません。
 世に出なかった仕事はやらなかったのと同じ。たとえば1万本のコピーを書いてクライアントに出していたとしても、どんな理由からであれ、1本も世に出せなかったなら実績としては0。
 実績0なら単なる自称クリエイターであり、世間からは「ああ、ただの修行中の使いっぱしりね」と見なされます。



■クリエイターはプレゼン命

 「プレゼン=説得なんてごまかしじゃない。いいもの創れば必ず採用されるはず」なんて思っているひともいるのではないでしょうか?

 他人の考えや作ったものを否定するのは楽しいものです。「ここが甘い」、「あそこがわかってない」、「そこがつまらない」……ネタはつきません。相手の考えや作ったものを否定するのは、自分がかしこくて、頭がいいような気がして快感です。
 一方、提案したり、作品を人前に出すのは怖いもの。どんな考えも、作品も必ず文句つけられる部分はあるものです。すべてをまるごと肯定されることなどありはしません。

 クリエイターの現場の仕事は、自分ではベストと思って出したものを否定されるところから始まります。

 相手の駄目出しに反論はできる。「この予算や条件ではそれは実現不可能」と言えば、「それをなんとかするのがあんたの仕事だろ?」と言われてしまいます。

 たまに相手の言い分を全部論破して、相手がすんなり「あ、そ。わかった」と言ったときは逆に怖いんです。その仕事はやらせてくれても、二度目は来ません。

 文句つけた相手はどこがどうと言えないけど、なんとなく納得できないと思っていることがしばしば。それはクリエイターの側に責任があるのではなく、クライアントが自分でわかってしまっていてクリエイター側に伝えていない条件ゆえの場合もある。だが納得できないでいることだけは確か。

 それが論破されて、自分がえらくてかしこい気分になっていたのをぺっしゃんこにされて不快な上、どっか納得できないものを納品されるんですから、そのときは言い返せなくて受け入れても、次は他へ仕事を出します。

 相手の言い分を「そうですね。なるほど」と肯定しておいて、そこから修正して、出しては、相手の出方を見て、調整して、最終的に自分なりのベストで、かつ、相手も納得できるものに落ち着かせる、これがクリエイターの現場の仕事。

 まあ、初めから相手が文句をつけるネタを仕込んでおいて、相手がまんまとそこをついてきたら、「じゃあ、こうしましょう」と実はあらかじめ用意しておいたベスト案を出して、相手には「俺の意見が通った」と満足させるなんて手もありますが…(^_^;。

 ともかく「いいもの作ったのに、クライアントがばかだから通らなかった」とか「俺は実力はあるのに運が悪い」などと考えるひとはクリエイターとしてやっていけません。運も実力の内。

 クリエイターはプレゼンで負けても、クライアントに言いたい放題言われてもめげずに、次から次へとアイデアを出していけるタフさが必要。

 広告屋は競合プレゼンだらけなので、テレビに出ているような、世間に名が通ったコピーライターやアートディレクターなどでも、というより有名クリエイターほど競合に借り出されることが多いので、むしろ有名クリエイタこそ10本作っても1本しか世に出ないのが日常です。

 競合プレゼンで負ける理由もいろいろあります。
 たとえばわたしがある代理店の下で一流企業のポスターの競合プレゼンの仕事をしたとき、こんな経験をしました。
 競合プレゼンに勝ち、細かいところも詰めて、撮影にこぎつけました。しかしその撮影当日、負けた代理店がなにがなんでもこの企業の仕事を取りたいがゆえに、無理やりねじこんで、自分たちだけ再プレしたことを聞かされました。時間も予算もかけて、はっきり言って、予算無視の赤字になるような企画で。そして結局、ひっくり返されました。さすがに撮影までしていたので、店内ポスターには使われましたが、メインの全国駅貼りや中吊りの仕事は持っていかれました。
 代理店の力関係や力の入れ方次第で、一クリエイターの力ではどうにもならないところでひっくり返ることも少なくありません。

 こんな経験もくぐり抜けて、作品を世に送り出せた者だけが世間からクリエイターとして認めてもらえるのです。

※2001年4月6日からしばらくフジテレビで「プレゼン・タイガー」という番組が放映されれていました。
 クリエイターを目指すひとにお勧めしたい番組でした。
 「新地下鉄開通につき、路線名募集!」、「@@市誕生!シンボルマーク募集」といった公募の最後の2案について、それぞれのプレゼンテーターがテレビ番組内でプレゼン合戦を繰り広げます。初回を見たところ、広告代理店の人間などプレゼンテーションのプロがプレゼンテーターとして登場していました。プロはプレゼンをどのように行うのか、どんな論理の組み立て方や話の展開をするのか、これは参考になる番組でした。



■SOHOを目指すなら、まずは社会経験

 ある年、マンションの管理組合の理事長になったわたしは週に数回、なんだかんだで呼び出されていました。

 ある日もインターフォンが鳴って、見ると20代のチャラチャラしたお姉ちゃんが立っています。
「○号室のリフォームしたいんですけど、いいですか?」
 まさかこんなお姉ちゃんが新しくあの部屋に入るの!?
「どちらさまでしょうか?」
「○号室をリフォームする者です」

 ……リフォーム会社の人間だと言いたいようですが、これじゃ話になりません。
 マンションの玄関まで出ていき、「許可ください」と言っているお姉ちゃんを制止して、管理人さんに話を聞きました。管理人さんが組合規則では「リフォームの際には理事長の許可を取ること」となっている旨、お姉ちゃんに言ったようです。

 工事の日付や連絡先の案内が印刷された紙の束を振りまわしているお姉ちゃんに、まずどの程度の工事でどの程度うるさくなるのか?などをたずねました。そして工事する部屋の上下左右のお宅を1件ずつ回り、挨拶して、騒音がうるさかった場合の連絡先なども渡してくるように、具体的に部屋番号を言って指示しました。


 さて、このお姉ちゃんは最初にどんな挨拶をすべきだったのでしょうか?
 読者の中で、学生の方や、あまり社会経験がない方は特にポイントをひとつずつ洗い出して考えてみてください。いくつか段落をはさんで、その後に模範解答を記します。

 最近「就職口が見つからないのでSOHOになろうと思います」と言うひとがいますが、わたしはなんとかして派遣でも、バイトでもいいから会社勤めをするように勧めます。会社では電話の取り方などのマナーをはじめ、周囲の先輩のやりかたを見て学べるからです。

 SOHOはほとんどの場合ひとり。誰もあなたをカバーしてくれません。すべての事柄にひとりで対処しなければなりません。だから経験したり、実際の現場を見て学ぶことがが大切です。

 たとえばクレームに対しても、経験なしにはなかなか適切な対応ができません。同じクレームでも完全にこちらのミスである場合と、相手に非がある場合で対応も異なります。クレームをつけてきた当人は知らないものの、実はその部下のミスである場合などもやっかいです。
 相手とこちらの関係、相手の性格、ミスの種類、結果の深刻さなどで、それぞれ対応が異なってきます。

 さて、先ほどのお姉ちゃんの正しい挨拶は…
「○社(社名)の○(氏名)と申します。○号室に入居予定の○様よりのご依頼で○号室のリフォームをさせていただくことになりました。つきましては理事長の(単にマンションの住人に片端から挨拶しているのか、理事長としてのわたしのところに来たのかをはっきりさせる必要があります)森田様にご許可をいただきたく、お伺いしました」
 最初に社名、氏名。そして自分の立場と、どういう立場の相手に、何を求めているのかを伝えなければなりません。あなたはきちんとポイントを押さえられたでしょうか?

 正しい挨拶から仕事は始まります。

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■「生活がかかっている」はそんなにえらいのか!?

 結婚し、出産したライター仲間と久しぶりに話したとき、彼女が 「いま仕事している雑誌の支払にも仕事のやり方にも納得がいかないものがあるけど、生活がかかってないから、なんか強く言えなくて…」
 と言ったので驚きました。

 彼女はライターとして数年勤めた後、数人の仲間と独立、事務所を作って仕事をしてきたベテランライター。だのに結婚、出産したとたん、なぜ「生活がかかってないから」と引け目なぞ感じなければいけないのでしょう?


 生活がかかっていないからと遊び半分のいいかげんな記事を書く者もあれば、生活がかかっているから『量をこなさなきゃ』といい加減な原稿を書いたり、『編集者には逆らえない』と指示通りに表面的受けだけ狙ったデマを書くライターもいます。
 しかし読者にとってはそれを書いたライターが生活がかかっているかどうかなんて関係ありません。生活がかかっていようといまいと、読者に対して責任を持った記事を書かなければなりません。

 生活がかかってないからと、払うべきものを払われなくてもあきらめてしまうひともいます。
 フィー(仕事に対する支払)は仕事への評価。生活がかかっていようがいまいが、正しい評価を求めるべきです。
 不当な評価を甘んじて受け入れることは同業者の足を引っ張る行為です。

 フィーに関する泣き寝入りは「自分さえ我慢すれば…」なんてヒロイズムに陥りがちですが、これは立派な他人への迷惑行為。
 ごたごた文句を言って相手から嫌な顔をされてはした金をもらうよりも、わずかなお金はあきらめたほうがずっと楽。しかし泣き寝入りしたら、同業者、特に後輩に迷惑がかかります。きっちり筋を通させるのは仕事をしている者の義務です。

 「生活がかかってない」ことにコンプレックスを感じる必要もないし、「生活がかかってない」からと逃げることが許されるわけでもなありません。


 世の中には「こっちは生活がかかっているんだ!」と主婦なんかと一緒にされたくないと肩肘張るひとたちが大勢います。男性だけでなく、女性にもいます。いや、むしろ独身女性や離婚女性ほどその傾向が強いようです。

 確かに月10万円程度まで稼ぐのと、生活できるだけ稼ぐのでは雲泥の差があります。全く別の世界。けれど、それは働く側の論理でしかありません。その仕事を受け取る側にとってはそれぞれの生活事情など関係ないこと。仕事をする者の責任にはなんら変わりありません。

 しかし、変な話ですよねえ。男性は結婚すると「これからは君の方には家族の生活がかかているんだから今までよりもがんばらなきゃな」と言われ、女性が結婚すると「仕事なんて趣味でしょ?」と言われるなんて……。
 それぞれの家ごとに事情は異なるはずなのに、誰もそんなことはたずねないで決めつけます。



■SOHOを選ぶ理由

 デザイナーや翻訳者などのように特にフリーランスが多い専門職の経験を持っているわけでなければ、SOHOになっても当分は所得(=収入-経費)は得られません。
 サラリーマンでもパートでも基本的に長く勤めれば、次第に収入は上がっていきます。まあ、パートやアルバイトの場合はすぐ頭打ちになりますが、それでも収入が下がっていくことはまずないでしょう。でもSOHOの場合にはしばしば下がります。
 SOHOは勤め人とは根本的に収入の入り方、キャリアと収入の関係が異なります。

 SOHOを始めたばかりでは利益が上がらず、しかもキャリアを積むと収入が下がる…それでもあなたはSOHOになりたいですか?


 わたしが2000年にやった仕事を数えてみました。
 雑誌は1号で1冊と数えました。書籍は昨年は手伝いばかりです。雑誌も書籍も、70ページ書いても1冊、1ページしか書かなくても1冊という乱暴な数え方です。
 雑誌9誌で計38冊、書籍やパンフレット6冊。

 まあ、比較的たくさん仕事しているほうではないでしょうか?

 月刊アスキー、別冊宝島など名が通った雑誌の編集部と直の仕事も多くあります。

 単価もその編集部や編集プロダクションの最高単価をいただいてます。
 ときに納品後に「直し不要の原稿で楽させてもらったのに、他のライターと同じじゃ悪いから」と先方から値上げしてくれたこともありました。

 この他に本業のコピーライターの仕事でECサイトやキャンペーンまるごとの仕事もしています。

 それでもわたしの所得は、区役所から「国民健康保険は他の保険には入れないひとのためのもの。所得が少ないなら、とっとと扶養家族になって国民健康保険から出ていけ」という勧告をなんとか受けずに済む程度にしか過ぎません。
 収入で見ても、昨年は同年代の平均年収を下回りました。

 よくコメンテーターとしてテレビに出ている有名男性ライターがライターのコミュニティでこう語っていました。
 「ライターは稼ぎが少なすぎて男子一生の仕事にならない」と。


 たぶん一度でも原稿料をもらったことのあるひとの中で、同世代のサラリーマンの平均生涯所得を稼げるひとは、全サラリーマンにおける社長になるひとの割合と同じ位ではないでしょうか?

 特にインターネットでは素人ライターが雇われて、プロの常識の1/10くらいで仕事するケースが増えており、価格破壊が進んでいます。
 価格が安くても、きちんとした仕事をしてくれていればいいのですが、著作権法、通販法、薬事など各分野の常識や心得もなく、事実確認のための何重ものチェック作業など、目に見えない作業や手間も怠った仕事が目につきます。
 仕事のレベルも価格も低下しており、今後の見とおしは暗くなる一方です。


 それでもわたしはSOHOを選びます。

 今年44歳になるわたしの世代では、女性がこの年まで肩叩きされずに会社に居残ること自体が易しくありません。
 弱小プロダクションに勤め続けていても、やはり同世代のサラリーマンの平均年収にはとうてい近づけなかったでしょう。
 コピーライターとして勤め続けていたら、とっくに現場から遠ざけられ、営業職的仕事をさせられていたでしょう。
 会社の仕事範囲に規制され、自分の興味の赴くまま、さまざまなジャンルに挑戦することもできなかったでしょう。

 平均睡眠時間は5、6時間、平均休日は月に1日か2日。風邪を引いても、ぎっくり腰になっても休めず、治す暇もなく、働いても働いても大した稼ぎが得られなくても、わたしは「人生が楽しい」と言えます。

 そしてSOHOには万にひとつではあっても、学歴、性別なども関係なく一発逆転を夢見られます。


 あなたはなぜSOHOを選ぶのですか?

 もしかしたら「自分の腕で稼いでいる」という誇りがほしいのでしょうか?
 だったら何年か社員、バイト、派遣などで経験を積んで、プロフェッショナルとして、正当な金額で仕事するSOHOになってください。

 「稼ぎたいけど、こどものために家にいたいからSOHO」という声もよく聞きますが、この考えはしばしば悲劇を起こしています。
 外に出ればその時間はあきらめがつきますが、家にいながら心ここにあらずはこどもに恨まれる上、自分も仕事に集中できません。取引先にも評価してもらえず、稼げません。
 「家にいるのに家事をしない!」ともめた結果のSOHO離婚も増えています。
 勤めている場合以上に家族にかかる負担は大きく、家族の仕事への理解が欠かせません。

 SOHOになりたい理由、SOHOを続ける理由、もう一度考えてみてください。

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■わたしの独立までの経路

 わたしは高校時代には文章に関わる仕事をしたいと考えていました。しかし0からの創作は自分の能力ではないと考え、編集者から始めて、文芸評論か脚色家あたりにでもなりたいと漠然と考えていました。大学3年のときに美術学科の広告デザイナー志望の学生だった連れ合いと出会い、コピーライターという職業を知り、大学なかばで針路変更しました。

 大学時代、いろいろな通信教育や各種学校で学びました。校正の通信教育は基本コースに加えて、上級コースも学びました。編集学校にも週に数回数時間コースで3ヶ月通いました。広告に興味を覚えたわたしは大学4年のとき、残る単位はゼミと卒論だけだったので、ゼミの教授に「卒論だけは書きますから」と頼んでゼミをさぼって、2年制のデザイン専門学校に通いました。

 大学卒業後はデザイン学校の残り1年に通う予定でしたが、春休みに修行のために行った広告プロダクションに「学校なんて通ってるより実践。うちの会社に来いよ」と言われて、デザイン学校を中退しました。
 しかしその広告プロダクションでは使いっぱしりさせられるだけで、給料どころか交通費もなし。4ヶ月目から交通費含めて月3万円のバイト料で、半年間でもらった金は合計9万円。半年分のトータルでも、当時の初任給にもならない額でした。当時は貯金を食っていました。
 これではまずいと会社の終わった後、コピーライターの専門学校に通おうと決めた頃、いきなりデパートの宣伝部に出向を命ぜられ、ようやく社員にしてもらいましたが、未経験でいきなり得意先に通う日々に突入。

 当時の広告業界では一生同じ会社にいるのは、一流広告代理店の社員くらいのもので、一般には数年ごとに転職、最初の会社ではアシスタント、次の会社でコピーライターやデザイナーとして仕事して、3つめの会社でチーフやディレクターに昇格、四十代になる頃に自分の事務所やプロダクションを開く……というのがふつうでした。

 しかしわたしが3つめの会社に移る頃には、業界も変わり始め、簡単には事務所やプロダクションを持ちにくくなり、上の人間が辞めなくなってつかえてしまったため、転職するひとが少なくなりました。

 わたしは最初はほぼ企業の宣伝部を経験、次が代理店系、最後が純然たるプロダクションと業界の3パターンを経験しました。その中でプロダクションではコピーライターはなかば営業も兼ねることを知りました。友人がフリーランスになっても、わたしは「営業ができないから」とフリーへの誘いを断っていましたが、結局会社にいても金の計算をして、他人のために営業したり、頭を下げなければならないなら、自分だけのために同じことをやったほうがいい……そう考えて、フリーランスになりました。

 会社勤め10年を経て、現在、フリーランス歴も10年を超えました。





■学校は役立つか?


 わたしは随分いろいろな学校や通信教育で学びました。果たしてそれは仕事に役立ったのでしょうか?……役に立ったとも立たなかったとも言えると思います。

 わたしは編集学校で印刷所見学にも行きましたし、デザイン学校で実際に印刷物を発注する課題もこなしたので、印刷物が刷り上がるまでの全工程をひととおり心得ていました。だから校正をする際も、どう直せば、きちんと正しく直されるか、またデザイナーや印刷所に負担をかけずに済むかがわかります。切羽詰った状況の際、誰に何を頼めばどこまで無理が通るか、誰がどこでNOと言ったら動かなくなるのか、把握しています。おかげで周囲とスムーズに仕事できたり、危機的状況もうまく乗り越えられたりします。
 しかし、これは学校でしか学べなかったことかと言えば、そうではありません。実際の仕事の中で周囲によく目配りし、余裕のあるときなどに周囲に教えを請うことでよりよく学べることです。また学校で学んでいても、それを実務で生かせない、学んだことと目の前の状況を結びつけられないひとが少なくありません。

 大学を出てから数年後、同じ文芸学科の同級生にばったり出会ったら、彼女はグラフィック・デザイナーになっていました。編集プロダクションで実務の中で学んで、学校へ行くことなく、デザイナーに転じたそうです。
 大学出のデザイナーと専門学校出のデザイナーを比べてみていると、専門学校出のデザイナーは大学の美術学科出のデザイナーよりも、はるかに実践的なことを知っています。わたし自身の専門学校での勉強を考えても、専門学校は実践的でした。しかし、専門学校出が優位に立っているのはものの半年でしょう。2年の専門学校の授業で学んだことは半年も仕事をしていれば学べることばかりです。
 そして現場の先輩はなまじっか半端な知識、しばしば古い業界常識を持った新人より、真っ白の状態の新人を好みます。

 業界に潜り込んで実践で学ぶのが最適です。ただ業界に潜り込むこと自体が難しいことは少なくありません。
 知人が「未経験者可。一から教えます」という編集プロダクションの就職試験を受けに行き、面接で「仕事は版下校正…」と言われて「版下? 校正? なんですか、それ?」と聞いて、「キミにはムリだね」と言われ、「応募要綱とちがう……」と悔しがりながら、わたしに相談してきたことがあります。
 その編集プロダクションは編集の素人でもよいとは考えていたものの、業界の素人では困ると思ったのでしょう。たとえばライターなり、出版社のつかいっぱしりでもやっていて、おおまかな編集の仕事の流れや業界用語を知っているひとを想定していたのだと思います。この場合は、編集学校で学んでいれば、就職できたでしょう。

 学校で学ぶ知識は勤めるために、あるいは勤めてから数ヶ月の間は役立つ程度のものに過ぎません。
 しかし、学校にはほかに良い点があります。

 わたしが行った大学は日本大学芸術学部。放送学科、写真学科、映画学科など芸術系ですが、純粋芸術というよりは実践的な分野中心の学校でした。
 わたしが大学を出た時代はバブルのはるか昔、やはり就職難の時代でした。わたしの大学では大学3年になるまでには就職のアテができていなければならないと考えられていました。
 大学では「大学3年にもなって学校へ来ている奴に将来はない」と言われていました。大学1、2年の内に、先生や生徒間のツテやコネで、写真学科ならカメラマンのアシスタントやスタジオマンに、放送学科ならアシスタント・ディレクターに、文芸学科なら出版社や編集プロダクションでバイトを始め、3年生にもなったら、バイトが忙しくて学校へなど来る暇がない状態になっているべきなんです。

 先にも書いたように、実力の世界とは、実力を発揮するチャンスを得るためにツテとコネと運が欠かせない世界。
 学校はそのツテやコネづくりに役立つ場所です。
 そういう意味では実際に学校に通うことが理想ですが、通信教育でも自分をアピールして、添削してくれる先生に注目される場合もあります。

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■資格は役立つのか?

 資格は役立つのでしょうか?

 就職でも、資格を持っているから雇うといったケースはまれのようです。むしろ資格をあまりズラズラと書いた履歴書は嫌われています。資格オタク、資格さえ持っていればいいと思った勘違い人間と見なされます。

 ましてSOHOでは資格はほとんど役立ちません。入力系の仕事の場合にはあまりに無知な人間がたくさん応募してくるので、その中では資格を持っていると、多少は勉強している人間である証明と見てもらえるようです。
 しかしレベルの高い仕事、最初からど素人は応募してこない仕事においては資格はあまり役立ちません。履歴や仕事実績が大切です。

 資格はなにもてがかりを持ってないひとが、なにから勉強したらよいかを考えるための材料、勉強をするための張り合いとしての目的と考えたほうがよいでしょう。

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■いま、改めて……「SOHO」とは?



 最近(2003年)、改めて「SOHO」とはなんなのか、考えています。

 以前「SOHOってなんだ!?」と題して、SOHOについて説明しました。このときはタイプ別に6つに分けました。

 世間の現実に沿って、「SOHO」という言葉からイメージされるものをすべて説明しました。しかし、「SOHO」という言葉は「サラリーマン」や「自営業」以上にあまりに幅が広く、しかもすべてのひとが幅広い意味で捉えているならまだいいのですが、ひとそれぞれが狭い定義で捕らえています。つまり「SOHO」を「A」の意味で捕らえてSOHO募集したのに、応募してきた側は「B」のつもりであるといったトラブルもありがちです。

 そこでいま、「SOHO」としか表現できないものだけに絞り込んでみようと思います。

 まず、自宅やサテライトオフィスで仕事しているサラリーマンは「テレワーカー」として外します。「SOHO」と聞いて、テレワーカーを思い浮かべるひとも少ないですし。

 次に外したいのが起業家です。起業家にとっては「SOHO」の「SO(=SmallOffice=スモールオフィス)」、「HO(HomeOffice=自宅事務所)」は通過点。通常、起業家と呼ばれるようなひとはやがて、それなりの規模の会社にしようと考えています。
 政府の「SOHO支援」を見ていると、実はこれがベンチャー、あるいは起業家支援の言い換えに過ぎないことに気づきます。
 たとえば今年2月1日から施行されている「最低資本金規制の特例」。株式会社または有限会社を設立する場合に、通常なら株式会社は最低一千万円、有限会社は最低三百万円の最低資本金を積まなければ設立できないところを、限定された期間中は限定条件下で資本金1円でも設立できるようにした特例です。
 しかし、既に個人事業などを起しているひとは対象外です。おかしな話ですよ。通常は個人事業で地道に実績と資金を積み上げて、会社にするもの。なぜ、政府がそれを許さないかといえば、この特例はいわばリストラ促進が目的だからです。社員を減らしたい大企業のために、政府がサラリーマンに「脱サラ起業」の夢をちらつかせて、「だから会社を辞めなさい」と誘っているわけです。「早く会社を起して、たくさんひとを雇って、リストラされたひとを雇ってくれ」と思っているからです。
 なお、資本金は1円でよくても登記その他設立には諸費用がかかりますし、5年以内に最低資本金を用意しなくてはいけませんから、決して気軽に会社を設立できるわけではありません。

 3つめに外したいのが、ポスターなどの印刷広告媒体や書籍などのデザイナー、ライター、翻訳者などです。SOHOという言葉が生まれる以前から、会社に属さず、自宅を仕事場に仕事しているひとが大半でした。多くの人は「SOHO」ではなく、「フリーランス」と呼ばれることを好みます。「SOHOなんかと一緒にされたくない」と感じています。

 自他共に「SOHO」と称するひとは、オンラインショップ経営者や、入力などの仕事をしているひと、そしてWebデザイナーなどです。

■「SOHO」なる言葉は誰のためのもの?

 「SOHO」という言葉を使うことに最近ためらいを感じます。

 詐欺師やネットワークビジネスは「SOHO」という言葉がだーいすき!

 また「画期的システムで、あなたも憧れのSOHOに!」だの、「あなたのSOHOデビューをサポート!」(※ちなみにこれは実際のものではなく、わたしがイメージでいま書いたコピーです)といった調子のコピーであおる通信教育やフランチャイズ、SOHOサポート会社の広告も目立ちます。

 これだけでも「SOHO」の文字を見かけたら怪しいと感じるに充分ですが、さらに最近、「SOHOなんて実態はないんじゃないかしら」と感じるようになってきました。

 そう感じるのは最近の「SOHOネットワーク」の動きのせいです。
 ライターのネットワークなど一職種ネットワークは「SOHO」なる言葉は使いません。「SOHOネットワーク」と名乗るネットワークの多くは入力やWebデザインが主流で、職種がさまざまなネットワークです。

 既に数年前から入力やWebデザインの仕事は希望者ばかりが多くて、どんどん価格が叩かれ、利益が上がらない職種でした。かろうじて利益を上げられているのはエージェンシー的にまとめ役をやっているひとばかり。だから、この分野の「SOHOネットワーク」が多いのですが……。
 この「SOHOネットワーク」の活動に、最近「SOHO講習」や「SOHO講演」がやたら増えてきました。ネットワークのトップたちは入力やWebデザインで稼いでいるのではなく、「SOHO」希望者相手に商売して稼いでいるように見えます。

 実際、オペレータとして勤め経験がある、プロフェッショナルの入力SOHOが「データ入力は金にならないから、入力の仕事をしなくなった。利益から入力について書く仕事に移行している」と書いているのを読みました。

 いまや、声高に「SOHO」と名乗るひとたちは「SOHO」をネタにして稼ぐひとたちになりつつあります。




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